美味しんぼ 花婿の父
東西新聞文化部に、おチヨが訪ねてきた。山岡たちの披露宴に招待されたことに礼を言いに来たのだ。だが、彼女にはもうひとつ、山岡にどうしても頼みがあるという。一生のお願いだから、結婚を機会に雄山と仲直りをしてくれというのだ。それだけは出来ないと、耳を貸さずに立ち去る山岡。残されたゆう子とおチヨの前に、やはり結婚を間近に控えた近城と二木まり子が現れた。実は、まり子の祖父が「山岡たちの披露宴で究極のメニューを出すのなら、まり子たちも同じ事をして貰え」と言い出して困っているという。だが、大原社主は「会社の財産でもある究極のメニューを使い回すなど、認められん」と、これを許さない。だが、ゆう子はこの二つの問題を解決する妙案を思いついたという。そのアイデアとは…。
初期美味しんぼの、誰にでも噛みつく山岡士郎、理不尽なまでに他者を徹底的に潰して尊厳を奪う雄山というところから、この中期美味しんぼに来て、二人ともかなり丸くなっている。実は、二人が仲違いしているのは、士郎の誤解が原因ではないのか?という描写が出てくる。雄山は妻を愛していて、妻も雄山を超一流の芸術家にするために自身を犠牲にしたと。そして、雄山という人間は、心が広く、誰よりも、人の痛みや苦悩を理解していた…と。初期の描写から見ると、ル・キャナルの件など、傍若無人としか思えないけれど、この山岡、栗田の結婚の少し前くらいから、雄山は段々、聖人のように描かれて行く。
初期の激しい戦闘描写に比べてだいぶ、穏やかになったが、料理を通して見える、様々な社会的問題や人間の持つ文化とは何か?などの深いテーマを扱っており、話も大変面白い。こんなに面白いマンガを抹殺してしまうのは、非常に残念だ。假屋氏の思想に問題があると、ネットで騒がれ、左翼的だの、反日的だのと攻撃の的にされたが、クジラの話など、日本文化を守ろうというテーマもちゃんとあり、末期の福島の真実に至っては、日本を愛しているということも伝わる良いエピソードだった。批判する人は読んでないのかと疑う。私はスピリッツでの美味しんぼ再開を望む。
(アマゾンレビューより)
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