長町の情景と謎めいた女性「ミサト」


1991年頃の長町駅周辺。

まだ再開発の足音が遠く、路地裏には古びた看板が並んでいました。パチンコ「トマト」が姿を消し、マンションが建つずっと前。SAY TAITO WINGS のネオンが街を彩り、太白楽器のショーウィンドウにはクラシックギターが並んでいた。エンドーチェーン西多賀店は週末になると家族連れで賑わい、日章堂長町店には雑誌と駄菓子が並んでいた。


駅前には蛸屋製菓の香ばしい匂い、伊藤魚店の氷に横たわる鮮魚、福助食堂の暖簾をくぐる人々。パチンコ「ナポレオン」は今のローソンの場所にあった。ヨークベニマル長町店もまだ健在で、その片隅には「おもちゃのポピンズ」、そして白松がモナカの看板が人々の記憶に刻まれている。



ある夜の出会い


そんな長町の街並みを歩いていたとき、私は「ミカド」という店に足を踏み入れた。そこに彼女はいた。ミサトと呼ばれていたが、本名は誰も知らない。23歳。すらりとした肢体、しかし胸は豊かで、身長は168センチ。外見だけならただの美人に過ぎないのに、不思議と視線を逸らせなかった。


彼女は客に微笑みかけるだけで、酔いも嫉妬も、そして欲望さえ鎮めてしまう。まるで心を読んでいるようだった。ある常連は「あれは霊感がある」と囁き、別の男は「超能力者だ」と言った。けれど真相は誰にもわからない。ただ、彼女に触れた人間はみな、しばらくの間、夢から覚めたように呆然と街を歩くのだった。


ミサトは長町の夜に溶け込み、ひとつの伝説になった。再開発でビルも店も変わり果てても、彼女の名だけは、酒場やパチンコ屋の噂話に、ひっそりと残っている。


ミサトの姿


その夜のミカドは、いつもよりざわついていた。

カウンターの酒瓶が照明を受けて鈍く光り、タバコの煙が漂う中、彼女はゆっくりと姿を現した。


肌けたドレスに身を包み、まるで舞台の上を歩くように店内を進む。その歩みは決して急がず、一人一人に視線を投げかけるだけで、男たちは自分が選ばれたような錯覚を覚える。


細身の体つきに不釣り合いなほど豊かな胸。こぶりで愛らしい尻。小さな顔と長い脚が生むプロポーションは、まさにモデルのよう。だが、ただ冷たい美人ではなかった。セクシーさの奥に、微笑ましさすら漂わせる笑顔があった。


その笑顔に、男たちは息を飲み、言葉を失う。

まるで目に見えない力に引き寄せられるかのように。


――「彼女はただの人間ではない」


そう囁く声が、長町の夜に、確かに混じっていた。