人間の学としての倫理学 (岩波文庫)


「倫」はなかま、「理」はことわり、すなわち「倫理」とは、人間共同態の存在根底としての秩序である。主著『倫理学』の方法論的序説とされる本書で和辻は、アリストテレスからマルクスにいたる西洋哲学の人間観と方法を十分に咀嚼した上で、人倫の体系としての倫理学という独自の筋みちを提示。日本倫理学に革新をもたらした。

 和辻は人「間」というものに着目する。なぜ人間なのか。人との間であるにも関わらずなぜそれが人というものを指すのか。それは結局のところ人は社会において生きる動物だからということになる。倫理学というのは人「間」の学問であり、その間柄に着目する学問である、と和辻は定義する。それは単なる道徳ではない。(アマゾンレビューより)


風土―人間学的考察 (岩波文庫)


風土とは単なる自然環境ではなくして人間の精神構造の中に刻みこまれた自己了解の仕方に他ならない。この観点から著者(一八八九‐一九六〇)はモンスーン・砂漠・牧場の三類型を設定し、世界各地域の民族・文化・社会の特質を見事に浮彫りにした。

著者は例えば、「寒さ」について、「さむさ」なる客観的実在があるのではなく、
寒がっているみずから自身を客観的対象として見出すであろうことを最初に述べつつ、
「寒さを感じる」と「寒いと感じる」の相違を説明し、本論がこうした視点でかかれていることを、
前もって断っているわけです。この点を重要な伏線として、
ある程度先入見を否定しえない風土概念について、
なるべく客観的に迫ってゆこうという、意思表示のようなものともとれますが、
いずれにせよ、そのような風土を思弁的のみならず、
リアリティを以て記述する際には、必要な態度だろうとは思います。(Amazonレビューより)